“小出し”の達人、カウント・ベイシーのピアノ。
ビッグバンドのアンサンブルを聴けばお分かりのとおり、
ベイシーのピアノは、演奏の要所要所をピンポイントで押さえたところに出現する。
とくに、イントロやエンディングの箇所に出現頻度が高く、ド迫力のビッグバンドサウンドの中に心地よい音量の谷間を作っている。
いわば、役割としては、
牛丼の上の紅しょうが。
天丼やカツ丼に添えられたタクアンやお新香。
あるいは、うな丼にかける山椒といったところか。
勢いあふれてスイングするベイシー・オーケストラ。
ノリは豪快、スインギー。
しかし、ベイシーのピアノが“締め”として、
演奏のちょっとした空白に存在しなければどうだろう?
きっと、数曲でお腹いっぱいになってしまうのでは?
箸休めのお新香を食べずに、
一気に丼モノをかっこんだときの胃もたれ感のように。
ベイシーのピアノは、ビッグバンドのサウンドをピリリと締める重要な役割を担っているのだ。
音数少なく、間違っても弾きまくることはない。
だからこそ、粋。
だからこそ、洒落ている。
しかし、オーケストラに親しみを感じれば感じるほど、ベイシーのピアノをもっと聴いてみたい! もっとたっぷり楽しみたい!という欲求も出てくるんじゃないかな?
そんな贅沢な欲求を満たしてくれるのが、コレ。
『フォー・ザ・ファースト・タイム』。
ベイシーには珍しく、ピアノトリオの編成だ。
ここには、リズムをスインギーに刻むフレディ・グリーンはいない。
かわりに、レイ・ブラウンのベースが勢いよく時間を均等に分割してゆく。
さらに、ルイ・ベルソンの気持ちの良いブラッシュ・ワーク。
これに乗っかるベイシーのピアノは、うん、やっぱり「小出し」だ。
短いフレーズを弾き、フレーズとフレーズの空白に出現するレイ・ブラウンとルイ・ベルソンのピアノが心地よい。
スインギーで、快活で、ゴキゲンで。
ブルース進行の曲を多めに取り上げているが、
これはもうベイシー得意のフォーマット。
ピチピチと勢いよくはずむベイシーのピアノを聴けば、
誰しも満面の笑みを浮かべているはず。
ちなみに、《ブルース・イン・ザ・チャーチ》と《ソング・オブ・ザ・アイランド》では、オルガンも披露している。
かつて、ベイシーは、オルガンをファッツ・ウォーラーに教わったことがあったそうで、それなりに味はあるが、それでも前後の曲のスインギーな演奏に比べると、どうしても“余芸”の域を出ていない。
ピアノほど巧みではなく、どことなく慎重さの漂うプレイが微笑ましい。
やっぱり、オルガンの後のピアノのシャキッとしたプレイが心地よく感じる。
そういった意味では、このアルバムの中でのオルガン演奏は、アルバム全体の中の箸休めコーナーなのかもしれない。
いくらノリの良い演奏だからといって、
歯切れの良いピアノばかりが連続して続くと
さすがに飽きが来るからね。
そういった意味では、ベイシーのオルガン演奏も、アルバム中の良いアクセントとして機能しているのだと思う。
ベイシーのオルガンに興味のある方も、是非。
●アルバム
FOR THE FIRST TIME
●レーベル
Pablo
●リーダー
Count Basie
●収録曲
1.Baby Lawrence
2.Pres
3.I'll Always Be in Love With You
4.Blues in the Church
5.Oh, Lady Be Good (Concept 1)
6.Oh, Lady Be Good (Concept 2)
7.Blues in the Alley
8.As Long as I Live
9.Song of the Islands
10.Royal Gardens Blues
11.(Un) Easy Does It
12.O.P.
●パーソネル
Count Basie (p,org)
Ray Brown (b)
Louis Bellson (ds)
●録音日
1974/5/22
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